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春に憧れている。わたしは、春になりたい。
春は暖かくて、柔らかくて、心地良くて、みんなに平等に春だ。春が来ると世の中の人間たちが浮き足立って、楽しそうにする。だけどわたしは春が好きじゃないから、ちっとも楽しくなんてなくて、にこにこしたみんなのことを横目で見ながら、ただただじっとして、春をやりすごすほかない。
悲しくて、情けなくて、とてつもなく恥ずかしい。
どうしたら春のことをすきになれるのだろうと、もう何年も考え続けてきた。でもそんなことは無駄で、春が来るたびに気持ちが落ち込む。嫌だと思うから、嫌なことばかりが記憶に刻まれて、いつまでも胸の奥にざらりと残り続ける。
あと何回、眠れない4月3日から4日の夜?朝?を過ごさなければいけないのだろう。死ぬまでずっとなのかな。
たぶん高校生のときは、朝まで眠れないなんてことはことは無かった。だとすればここ5年くらいのことになる。眠ってしまえば朝が来て、朝が来れば明日が来て、明日が来たら、わたしは誕生日の一日が終わるまでは誕生日なのだから困る。
どこかへ出かければ、周りを見て自分がひどく惨めに思えるし、家でじっとしていると虚しくてたまらないし、家族と関わると萎縮してしまう。他人には迷惑をかけられないから、一緒に過ごして欲しいなんて言えない、言わない。嘘、言うけど、巻き込んでごめんねって思う。わたしの人生にあなたを巻き込んでごめんなさい、あなたの人生にわたしが登場してごめんなさい。誕生日のことになると、どうしてこんなふうになってしまうんだろう。
春の似合う女の子になりたい。
暖かくて、柔らかくて、心地の良い女の子。そんな女の子だったら、春のことをすきになれたのかな。誕生日をえがおで過ごせていたかもしれない。
春のことをすきになりたい、春の似合う女の子になりたい、春になりたい。どの望みも叶わないから、春が憎い。
早く春が終わりますように。
(あるいは、春のことがほんの少しでも愛おしく思えますよう。)